市街化調整区域で建物は建てられる?

土地が市街化調整区域の場合、原則として建物が建てられません。しかし、自治体の許可が得られれば、あるいはすでに得られていれば建築可能、再建築も可能な場合があります。住まい探しの中で、市街化調整区域の中古物件を見かけることがあります。注意点等をふまえて説明します。

市街化調整区域とは

市街化調整区域は都市計画法により定められる区域区分のことで、区域区分には他に市街化区域と非線引き区域があります。3つの区域区分の中で、市街化調整区域はどのような区域なのでしょうか。

建物を建築するのに制限があります

市街化区域や非線引き区域が原則として建物が建てられるのに対し、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」とされ、原則として建物を建てることができません。つまり、市街化調整区域にある土地を土地活用しようと思えば、原則として建物を建てない土地活用を考える必要があります。

都市計画法に定められた3つの区域区分

市街化区域原則として建物を建てられる
市街化調整区域原則として建物を建てられない
非線引き区域原則として建物を建てられる

特別に許可を得られれば建てられる場合があります

一方、市街化調整区域でも都市計画法43条の許可を受けることができれば建物を建てることができます。都市計画法43条の許可を受けるための基準は建築予定の土地の属する自治体により異なります。

市街化調整区域内で建物を建てる場合の注意点

市街化調整区域内でも許可が得られれば建物を建てることができますが、基本的に市街化調整区域内では都市計画が進められておらず、インフラ整備が施されていない場合があるため注意が必要です。仮に、インフラが整備されていない環境下で建物を建てるとなると、自身で電気、ガス、水道等を整備しなければならず、手間も費用もかかることは留意しなければいけません。すでに建築済みの物件の場合、インフラは整ってはいますがそのメンテナンスは地震で行う必要があるため、現状の老朽具合の確認、メンテナンスについての確認は重要です。

市街化調整区域に適した土地活用

住宅取得の話から少し外れますが、市街化調整区域に適した土地活用として、一番に検討しやすいのが太陽光発電システムを設置して売電収入を得る方法です。これは、市街化調整区域が基本的に郊外に設定されることが多く、他の土地活用と比べて、立地を気にしなくてよい太陽光発電システムの方が活用しやすいケースが多いからです。

なお、都市計画法43条の許可を得られれば建物を建てることもできますが、建物を建てる際には高齢者施設や医療施設の方が新たな許可は取得しやすいと思われます。以下、建物を建てなくてもできる活用方法と、特別に許可を得てできる活用方法についても説明します。

建物を建てなくてもできる活用方法

市街化調整区域は原則として建物を建てることができないため、建物を建てなくてもできる活用方法について考える必要があります。建物を建てなくてもできる活用方法には、以下のようなものがあります。

1.駐車場
2.太陽光発電
3.資材置き場
4.墓地・霊園

1.駐車場

駐車場として土地を活用するのであれば、建物を建てられない市街化調整区域でも問題ありません。ただし、市街化調整区域は郊外に設定されることが多いため、集客面には注意が必要です。駐車場は主に月極駐車場とコインパーキングのふたつに分けられます。それぞれどういった方が利用するのかを考えて活用しなければなりません。

例えば、月極駐車場であれば駐車場のない職場の近くや、自宅敷地内に確保できなかった2台目、3台目の駐車場としての活用が考えられます。コインパーキングであれば商業施設の近くや駅の近くなどが活用しやすいでしょう。上記のような条件を満たした土地であるかよく検討する必要があります。

【メリット】初期費用が少なく済ませられる

駐車場は、土地を整地して車を駐車するための白線を引く程度でよいため、初期費用を安く済ませることができます。コインパーキングの場合には、必要な設備の設置に費用がかかることもありますが、初期費用を抑えたいのであれば整地をしないまま利用できることもあります。

【デメリット】固定資産税が高い

駐車場に限らず、建物を建てない土地活用法全般に当てはまりますが、土地の上に建物を建てると、土地の固定資産税が6分の1から3分の1になる特例の適用を受けられるのに対して、駐車場など建物を建てない場合にはその特例の適用を受けることができません。このように建物を建てない土地活用では固定資産税が高くなってしまう点に注意が必要です。

2.太陽光発電

すでにお伝えした通り、太陽光発電システムは市街化調整区域にある土地活用としてオススメできる方法です。

建物を建てないでよいことはもちろんですが、何よりも太陽光発電システムによる土地活用は集客を気にしなくてよいからです。2018年現在、10kw以上の太陽光発電システムを設置すれば、20年間、固定価格で買取してくれる制度が用意されています。少なくとも20年の間に太陽光発電システムの設置費用は回収できるよう、売電価格が設定されているのです。20年の間に太陽光発電システムが故障してしまわないよう、メーカーの保証制度などに注意する必要があるでしょう。

3.資材置き場

資材置き場は建物を建てることなく活用できて、また整地も不要なケースもあり、建物の建てられない市街化調整区域でも利用しやすい方法です。会社によっては、貸し出したお礼として簡易的な整地をしてくれることもあるでしょう。ただし、資材置き場は市街化調整区域にせよ、それ以外の区域にせよ、周辺に資材の置き場に困っている会社がある必要があり、立地条件が限られる点に注意が必要です。

4.墓地・霊園

市街化調整区域にある土地を墓地や霊園として土地を貸し出すのも有効です。

墓地や霊園はあまり価格が高い土地には向きませんが、市街化調整区域の土地は比較的安価な土地が多く、墓地や霊園業者にメリットがあります。貸し出す側としてはある程度広さのある土地である必要がありますが、他の土地活用より高い賃料を得られるかもしれません。また、墓地や霊園として土地を貸し出す場合は少なくとも数十年は土地が返ってこないことは覚悟しておかなければなりません。

特別に許可を得てできる活用方法

市街化調整区域にある土地でも、自治体ごとに定められた基準を満たせば特別に許可を得て建物を建てることができます。市街化調整区域の土地に建物を建てて活用する方法としては、以下のようなものがあります。

 

1.高齢者施設
2.社会福祉施設
3.医療施設

1.高齢者施設

市街化調整区域にある土地で、特別に許可を得て建物を建てて活用するのであればサービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームなど高齢者施設を建てる方法が有効です。また、こうした高齢者施設は市街化調整区域の土地でも周辺住人の需要やニーズを鑑みて自治体が必要と判断した際には許可が下りることがあります。

なお、高齢者施設は、施設内で一通りの設備が揃っていることが多く、郊外にあることの多い市街化調整区域の土地でも比較的需要が落ちにくいという点もポイントです。

2.社会福祉施設

社会福祉施設は特別養護老人ホーム等の公的施設で、こうした公的施設は市街化調整区域の土地においても事前協議と届け出を行うだけで建築が認められます。そのため、通常の方法では建築の許可が下りない土地でも、土地のあるエリアで社会福祉施設の建築を検討している社会福祉法人が見つかれば、賃料を得ることができます。

なお、土地の持ち主が建物を建てて、土地と建物とを合わせて貸し出す方法が一般的で、高額な初期費用が必要となります。比較的高利回りで貸し出せることが多いですが、数年のうちに事業者が撤退(倒産)してしまうと建物を他に転用しづらくなる点に注意が必要です。

3.医療施設

医療施設も、社会福祉施設と同様、公益上必要な建物として事前協議と届け出を行うことで建築の許可を受けることができます。土地周辺に医療施設のニーズがあり、開業したい医師や医療法人が見つかれば、活用できますが医療施設も土地の持ち主が建物を建てて貸し出す方法が一般的です。

建物を建てる場合の手続き方法

市街化調整区域にある土地に建物を建てる場合、都市計画法43条の許可を受ける必要があります。都市計画法43条の許可の基準は自治体によって異なりますが、敷地相互間100mに50戸の建物が連なっていることや、土地の前面にある道路が市街化区域まで幅4mもしくは6m続いているか、などが条件です。

市街化調整区域内で建物を建てる場合の手続きの流れ

市街化調整区域内で建物を建てる場合には、都市計画法43条の許可を受ける必要がありますが、許可を受けるための手続きは以下の通りです。

 

1.自治体へ事前相談
2.自治体へ事前協議
3.都市計画法34条に該当する建築物であること
4.開発審査会
5.都市計画法43条の許可
6.建築確認申請

上記の通り、建物を建てる際に必要な建築確認申請を提出する前に都市計画法43条の許可を受けなければなりません。自治体への事前相談は具体的に土地活用の方法を決めていない時でも相談できるため、まずは自分の土地がどのような方法で許可を受けられるのか相談に行ってみるとよいでしょう。

都市計画法43条の許可を得るには、都市計画法34条に該当する建築物でなければなりません。都市計画法34条の内容は以下の通りです。

 

1号当該市街化調整区域周辺に居住している者の日常生活に必要なもの
2号当該市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源等の有効利用のため必要なもの
3号温度、湿度、空気等について特別な条件を必要とする事業の用に供するもの
4号農業、林業、漁業の用に供するもの、又は農林水産物の処理、加工に必要なもの
5号特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律の所有権移転登記等促進計画に定める利用目的によるもの
6号都道府県が国又は独立行政法人中小企業基盤整備機構と一体となって助成する中小企業者の行う他者との連携等に寄与する事業の用に供するもの
7号市街化調整区域内において現に工業の用に供されている工場施設における事業と密接な関連を有する事業の用に供するもので、これらの事業活動の効率化を図るために必要なもの
8号危険物の貯蔵又は処理に供するもので、市街化区域内に立地することが適当でないもの
9号市街化区域内に建築又は建設することが困難なもの
10号地区計画又は集落地域整備法に基づく集落地域計画の内容に適合するもの
11号市が条例で指定する市街化区域に近接する区域において、条例で定める周辺環境の保全上支障がある用途に該当しないもの
12号市街化区域において行うことが困難又は著しく不適当と認められ、市が条例で区域、用途を限り定めたもの
13号既存の権利の届出により、行われるもの
14号上記以外のもので、開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域において行うことが困難又は著しく不適当と認められるもの

■参考

開発許可の立地基準|千葉市都市局建築部宅地課

農地を転用する場合は転用許可が必要

土地活用しようとする土地が農地である場合、建物を建てて土地活用する際には宅地に転用する必要があります。市街化区域の場合と市街化調整区域の場合で、手続きは異なります。

市街化区域にある農地は農業委員会に転用届を出すだけでよい一方、市街化調整区域にある農地の場合は転用の許可が必要で、転用許可申請書を出さなければなりません。

なお、自分の所有している農地を農地以外に転用する時には農地法4条の許可が、農地を購入して宅地に転用する場合には農地法5条の許可が必要です。

農地転用に必要な許可

農地法4条農地を農地以外に転用する
農地法5条農地を農地以外に転用して所有権を移転する

一方、農振法(農業振興地域の整備に関する法律)により、農振地域に指定された農地に関しては原則として農地転用が認められません。農地を土地活用する際は、まず、農振地域に指定されているかどうかをチェックして、農地転用の手続きが市街化区域か市街化調整区域のどちらであるのかを確認するようにしましょう。

売却を検討する場合は以下の点に注意

原則、建物を建てることができない市街化調整区域内では、土地の売却が難しいとされています。土地利用も制限されていることから金融機関による担保評価も低く、ローン申請が却下される可能性もあるため、購入者を見つけることが容易ではありません。一方で、土地利用の制限があることで土地の価格が安く、固定資産税評価額も低くなるなどのメリットがあります。売却を検討しているのであれば、そういったポイントをアピールしながら進めていくとよいでしょう。

「地目」を確認してみましょう

売却を検討している場合は、地目を確認してみましょう。地目とは、宅地、畑、公園、学校など土地の用途による区分のことで、登記事項に記されています。市街化調整区域内の土地を売却する際、地目が農地である場合は、基本的に農地として売却しなければならないため注意が必要です。地目が農地の土地を住宅建築のために利用することも不可能ではありませんが、上記で説明したように転用する旨を申請し、知事の許可を得る必要があります。

まとめ

市街化調整区域にある土地の活用法についてお伝えしてきました。市街化調整区域では原則として建物を建てることができませんが、特別の許可を得て建物を建てることができる場合もあります。そのため、建物を建てずに土地活用する方法と、建物を建てて土地活用する方法の両方について理解しておくことが大切です。

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